2013年2月にみた映画の感想です。
そりゃ、いい映画が見たいからいい映画を選んでみるわけで、そうすると必然的に言いたいことも増えるわけでこのインフレは止まりようがありません。

16.シークレット・サンシャイン(2011) 2回目
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チャン・ドヨン主演の韓国映画。事故死した夫の故郷に息子と帰ってきたシネ。人間関係に戸惑いを覚えながらも新しい生活を始めていくが、身代金目当ての殺人事件が起き、最愛の息子を失ってしまう。普通の映画ならここまでの話自体をメインに据えるのかもしれないけど、ここまではあっさり描かれる。本作はここからが本題。

人生の絶望に陥った人間がまた生きる希望を見出すには何が必要か。
もっと突っ込んで言うと、キリスト教にそれが可能か?救いはあるのか?
結論を言うと、キリスト教の持つある矛盾によってそれは出来ないんですね。

韓国はカトリックが多いそうですが、ここまで切り込むのはかなり勇気がいるんじゃないでしょうか。
それでも、本当の最後の最後に違った形で少し希望が提示されます。

暗い映画なので万人が好きとは言わないけど、ものすごくいい映画。
チャンドヨンの演技は素晴らしいし、彼女に一方的に行為を抱くソン・ガンホも最高です。

☆☆☆☆☆

17.ユア・マイ・サンシャイン(2005)
これも韓国製作で同じくチャンドヨン主演。実話を元にしている映画です。
デリヘル嬢をやっているウナと彼女に一目惚れをしてしまった農家を営む冴えない独身男のソクチュンの恋愛ストーリー。
本当に最初は馬鹿馬鹿しい感じの恋愛ストーリーだったんですね。ウナは色々と過去があって風俗嬢をやってるんだけど、ソクチュンの一方的な本当にワガママな勘違いの自己満足の猛プッシュで次第にウナも絆されていく。私はこういう映画内の純朴キャラってのがどうも嫌いで、「こんな奴はいない」で一蹴したくなるのです。

ただ、この映画は一旦2人が結ばれてから急展開を見せます。
ま、とは言えよくある難病ものなんですが、映画の時代を考えるにこの病気による差別・偏見は異様なものを感じます。
俳優さんの演技はやはり韓国クオリティで素晴らしい。嫌いな純朴男も終盤には鬼気迫る演技を見せてくれます。前半のナヨナヨしたのは演技だったな貴様!と元も子もないツッコミを入れてみるほど。

でもなー、好きじゃないなー。

☆☆☆

18.ヒューゴの不思議な発明(2012) 2回目
パリ駅内に住み、時計のねじ巻きの仕事をする一方で、お父さんの形見であるからくり人形の修理をする少年と、駅内でおもちゃ屋を営む頑固なおじいさんと、その孫の美少女(クレエ・グレース・モレッツ!)が主な登場人物。このからくり人形の秘密を解き明かした時に映画に縁の深い1人の人物が浮かび上がります。その人物の歴史を辿ることで、映画というものがどれほど豊かなエンターテイメントであるか、どれほど素晴らしい価値をもつものかを古い映画の映像を交えて語られます。そしてその延長線上にこそ今見ているこの映画があるのだ。
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初めて見た時は予想外のストーリーにかなり戸惑いました。

映画賛歌の映画です。

☆☆☆☆

19.ヤング≒アダルト(2012)
アホみたいに長いから覚悟してね。先月のジュラシックパークの倍で3000字!
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37歳で独身のメイビスは10代女子向けの恋愛小説のゴーストライター。地元を離れて都会で生活をしているが、ある日地元の住む元彼のバディから子供が生まれたとの連絡を受け、ずっと引きずっていた思いと共に地元へ向かう。なんとかヨリを戻そうと家族のいる彼と親密になろう努力するが、彼は一向に乗ってこない。それでもメイビスは「きっと彼も私と一緒になりたいと思っているはず」と語り、さらにアプローチを仕掛けるが。。。

すごく見てよかったと思う。多分普通の人がよかったと思うところと違うところかもしれないけど、とにかくそこが私にはすごくよかった。それは最後に書きます。

見ていてすぐに分かるんだけど、タイトルにもある通り彼女は大人になりきれていない大人です。
37にもなってヨレヨレのキティちゃんのTシャツを着ていたり、実家の部屋には17歳の時の誕生日会の時のポスターがまだ貼ってあったり、お気に入りの曲はカセットテープに吹き込んである昔の曲。冒頭に書いた発言のような相手の事情や気持ちを顧みない身勝手な恋愛観。

なぜ彼女はこんなことになっているかといえば、彼女の人生のピークが10代後半だったと彼女自身が思っていて、彼女の中で時間がそこから止まってるからなんですね。そしてこのピークの時に付き合っていたのが連絡をくれたバディ。

だからこそ彼から連絡が来た時に、彼女の中で当時の自分へ帰りたいという思いが増幅されたのだと思います。
カセットテープの曲は象徴的です。メイビスの同級生がバンドの演奏を披露するシーンがあるのですが、そこで演奏する曲がまさにこの曲。この曲を通してメイビスと同級生が当時をどのように捉えているかが浮き彫りになります。同級生にとっては誰もがそうであるように懐かしい思い出なんです。当時の仲間と集まって当時流行った曲を一緒に歌う。ところがメイビスだけは違う。自分の人生で絶頂時の象徴であり、未だにそれを求めてる。彼女にとっては過去の思い出というよりも、37までずっと引きずっている進行形。今でもあの頃のように輝いていた自分でありたい(もしくはある)と思っている。

彼女の行動は終始痛い。最初は笑えるんだけど、徐々にエスカレートしていって本当に見ていて哀れになるほど身勝手で自己中心的で子供っぽい。
最後に勝負を決めに行ったメイビスはようやくバディにその気がないと気づき、溜まっていた鬱憤をすべてぶちまける。近年稀に見る痛い女の名場面だと思います。心が抉られます。ただ彼女には辛い過去があっての話で、もしかしたら本当に幸せになれていたのかもしれないし、運が悪かっただけでは済ませられない悲しい事情があります。

その後、愚かだった自分に彼女は気づきます。自分がどれほど哀れな状況だったかをきちんと把握します。

この映画は大人になりきれていないヤングアダルトであるメイビスが大人へと向かって成長することで終わるのですが、その大人への成り方が面白いなと。

最後に友人の妹と話すシーンがあってそこでホントに簡単なことに気づきます。
「あなたは私の理想よ!都会で有名で!この町の住人は、”無”。最低の街。死んだほうがマシよ。私を連れてって!」
要は、田舎はクソで自分はイケてると気付く。

元々も彼女にも「こんな田舎」なんて気持ちはあったのですが、自分の絶頂期を過ごした街であることとバディへの思いに引きづられて気持ちの整理がついていませんでした。バディへの恋も終わり、痛々しい自分を客観視出来た今、彼女を田舎に縛るものはなく、むしろ圧倒的強者の立場から田舎を見下すことが可能になりました。

そして彼女は都会へと帰っていくのです。

果たして彼女は大人になれたのでしょうか?どんな大人になるのでしょうか?


と、一通りの話が終わりましたのでここからが私にとっては本題です。

メイビスが田舎に帰りバーに一人でいるときに偶然マットという同級生に出会います。彼女にとってマットはどうでもいい存在ですが彼からバディや街のことについて情報を聞き出し、彼女自身の計画なども話している内に、よき話し相手となっていきます。田舎で話す相手のいない彼女にとって貴重な存在です。

マットと話すときの彼女は本当に素を曝け出していて、彼女の子供じみた妄想やバディへのアプローチ方法、奥さんへの悪口などとにかく思っていることを全部吐き出します。マットはそれを注意深く聞きつつもバカなことをするんじゃないと忠告を送ります。

そして、彼女が大衆の面前で大恥をかき、自分の姿を客観視して自己嫌悪の最骨頂に達した時、居場所のない彼女は唯一本音を曝け出すことの出来るマットの元へ向かいます。

その時に彼女がマットに見せる自分の姿は映画史に残ると思う。
プライドも過去の栄光も恋心も全てズタズタになってもっとも惨めな彼女の心を絵的にみせるとこうなるのかと。

ヌーブラ+パンスト+パンツという女性にとっておそらく他人に最も見られたくないであろう姿。最初笑ったけどすぐその後に泣けて来ましたね。
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そしてこの時にマットが言うのです。「今の君も素敵だよ」」と。

この後一夜を共にするのですが、いわゆるベッドシーン的な官能的なものではありません。まさに慰め合いと傷の舐め合いに近いベッドシーンです。

本当に自分が最低の最低の姿を見せて自己嫌悪に陥っている時にそれでもなお自分の身を案じ、肯定してくれる人がいたら、そんな君でも僕にとっては素敵な存在なんだといってくれる人がいたらそれは嬉しいよね。別にこのシーンに限ったことじゃなくて自分の日常においてもね。

とは言え分かりきっていることですがメイビスとマットが恋人になるなんてことはなく、翌朝にマットの妹と上に書いたような話をし、彼女は元いた都会へと帰っていきます。きっとここで起こったことは全て田舎に置いたままで。


ここからは完全に余談になります。
マットに抱かれるときにメイビスは"Hide me"と言います。日本語訳には「抱いて」って出ていました。私は英語はさっぱりプー太郎なのでしょうがないのですが、万が一そういうシチュエーションにおいて外人女性に同じ事を言われたらすぐさま反応出来るのであろうかと不安になります。
思わず毛布とかでガバッと覆ったりしたらせっかくのチャンスを棒に振るどころか二度と口を聞いてもらえないでしょう。
分かりやすく"Hold me tight!!!"とか言ってくれないと困る。でも今はもう大丈夫です。


あと、こんな映画で言うのも変ですがオンナという生き物は楽しそうだなと思いました。
メイビスは計3回、バディへ会いに行くのですが、田舎臭い女共とは違う都会の女の魅力を見せつける毎回毎回化粧やら服やら小物やら違うパターンで攻めていくんです。その変わりようが面白くてね。
田舎の量販店に買い物に行って冴えない服を見ながら「MARC JACOBSはないの?」とか言ってみたり。男だったら自分をよく見せるためのパターンはそんなにないですからね。
逆に言えばすごく大変なんだろうし、例え男にそれを求められても私は困りますが、なんか楽しそうだと思いました。

以上です。世の女性たちよ、是非見られーい!
まだまだ書きたいことはありますがこの思いはいつかこの映画を見た人と酒を飲みながら語ることとします
どうもお付き合いありがとうございました。でもまだまだ続くよ、次の映画はウォッチメンです!

☆☆☆☆☆


20.ウォッチメン(2009) 2回目
舞台は冷戦下のアメリカ。数々のヒーロー達が存在しており、自警団であったりアメリカ政府や軍と絡んだりとヒーローが歴史に大きく関わってきた。しかし、ヒーロー達は政府や市民から次第に疎まれる存在となり、法律によりその活動が禁止される。
米ソ間の緊張感が最高に高まり終末時計が今にも0時を差すかという時に、コメディアン(ケネディ暗殺はこの人の犯行)というヒーローの1人が殺害される。別のヒーローのロールシャッハはヒーロー抹殺計画ではないかと疑い捜査を開始するが。。。

ウォッチメンの原作コミックは名著です。
文学的にも哲学的にも物語上で問われている政治的・思想的な指摘の鋭さ、もちろん面白さや画作りといった漫画としての基本的な質においても素晴らしい大変な名著です。1回目見た時は原作未読であったため、???って感じ終わったので、原作を読んでリベンジをしかけました。
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面白い。はっきり言って映画はダイジェスト版なのでわからない所が多いのはしょうがなかったのも納得。
中身が濃すぎてストーリーとか上手く説明出来ません。

簡単に言うと、ものすごく力もあって、お金もあって、賢くて、人格もあって、人類史上最高の人物と呼ばれるような完璧な人間が仮にいたとして、その人に世界の未来を託せばきっと人類の抱える多くの問題は解決するとしたら、あなたはその人を支持しますか?もし今の民主主義のやり方だとあなたの意見は選挙という形で投じることは出来るけど世の中は悪い方に行っちゃうかもよ?

という問いがバーンと最後に振り落とされます。

はっきり言ってヤング≒アダルトでエネルギーを使い果たしたので書く気が(そしてあなた方の読む気もきっと)なくなったので短めにしておきます。本来ならばどれだけ書いても書ききらないのですが。またいつか映画を見た人と酒を飲みながら・・・

☆☆☆☆0