埼玉は越谷にあるイオンレイクタウンに行って来ました。

GW中ということもあって、大変な賑わいを見せる中、三十路前の多感な時期の私なんかが1人で行くもんだから、本当に色々と考えてしまいます。

カップル、子連れ、地元の中高生が何万人といるかもしれないところに

私が1人で潜入したわけです。

今日はそこで思ったこと、私自身の内面を見直してもいいのですが、イオンレイクタウンについて書いていこうと思います。


私は誰ですか?

そう、ショッピングモール評論家ですね。
基本的なスタンスとして、ショッピングモールは好きです。
地元の商店街が潰れる?どこも同じ様な雰囲気?渋滞?
まちづくり3法などを持ち出すまでもなく、いろいろと言いたいことがあるでしょうが、基本的に私はショッピングモールを擁護します。

地元の商店街が潰れるなんて競争努力もしてないのだから当たり前です。努力してから言え。
同じ様な雰囲気はこれからの課題。それこそ地元と仲良くすればよろしい。
渋滞は我慢しろ。
それにイオンモールが出来るとそれ用に道路が整備されてバスが通ったり、駅が出来たりするからOK。


ボブ・ディランの"Times they are changin"を貼っておきます。


広島に住んだ1年半はイオンモールから徒歩10分ぐらいのとこに住んでいました。
もちろんそれを狙ってのことです。

まあ、その便利なこと。便利なこと。
私の広島時代の支出の半分以上はここで落としてんじゃないか、というレベルでした。

なぜか。その理由を列挙していきます。
1.スーパーマーケットが素晴らしい
 付近で最も大きいスーパーが23時まで開いており、しかも安い。品揃えもよく、野菜等が売り切れていることもほとんどなかった。

2.本屋さんが素晴らしい
 広島でも最大級の本屋さんが同じく23時まで開いていました。

3.少し良い物が手軽に手に入る
 わざわざ繁華街に電車やバスを使って行かなくても、ちょっとした雑貨やキッチン用品、甘味もの、などちょっとした贅沢品までなら簡単に手に入る。

4.映画館が近いことは素晴らしい
 これは頻繁に映画を見るようになって気づいたのですが、早く起きてしまった朝などにフラッと映画を見て、終わって出てきてもまだ午前中。というのが素晴らしいライフスタイルのように思えて足繁く通っていました。

これらはあくまでも「近くに住む」という条件での話です。
まとめると重要な要素は2つ。
「利便性」と「少しの高揚感」
これがイオンモールの魅力だと私は考えます。

「近くに住む」という条件を外せば、残るのは「少しの高揚感」です。

イオンレイクタウンにはここについて問いたい。

「少しの高揚感」とわざわざ書いたのは「少し」であることが大事だからで、結論めいた言い方をすれば「少しの高揚感」が限界であり適度とも言えます。

イオンレイクタウンよ、お前、そこちゃんと分かってるか?


イオンモールは現在全国60ヶ所に展開しています。
その中でもイオンレイクタウンは最大のもので、イオンモールだけでなくその他のショッピングセンターの中でも最大です。
AEON_LakeTown_Panorama


kaze棟、mori棟、アウトレット棟の3棟から構成され、その延床面積は393,916平米を誇ります。
参考までに私がよく通った他のイオンモールと比較してみます。
イオンモール福岡    160,000平米
イオンモール広島府中 218,000平米

レイクタウンが如何に大きいかがお分かりかと思います。一般的なイオンモールの2倍から2.5倍の大きさとイメージして頂ければよいです。

私はこの規模こそがレイクタウンの一番の問題だと思いました。
この大きさがもちろん魅力の1つには違いないのですが、大きすぎる故にイオンモールの魅力である「少しの高揚感」とのバランスが悪くなってしまっているような気がしたのです。

本当にレイクタウンは大きいです。数字で見るより実際歩いてみると、どこまで続くんだこの吹き抜けはと何度も思います。

その異常な大きさを示すにはスタバの数を示すとわかりやすいと思います。

5店舗

私は3店舗しか気付きませんでしたが、調べてみると5店舗らしいです。

もう一つ数字で示すならば、駐車場の数ですね。
10000台収容可です。

実際に何人いるか知りませんが、少なくとも10000台の車と駅からの人の流れ、モールの混雑を考えれば、GWという事もあって数万人というのは大げさではないと思います。

イオンモールに入っている店舗は誰にも馴染みのある定番のお店からそれぞれの専門店とラインナップは多彩ですが、大体どこのイオンモールでも同じ様な感じです。
そしてその専門店は得てしてそれほど高級なものではありません。程よくいいものが置いてあるといった具合です。
これはマーケティングの問題だと思います。高級なものを欲しければ人は百貨店に行ったり、都会の専門店に行くでしょうから、私が上に書いたような少し良いモノをたくさん揃えるという方向に店舗展開も進んでいったものと思われます。

しかし、売り場面積が倍増した際にそれがどうなるかというと、印象としては水増し効果程度にしか思えないんですね。

どういうことかというと、あちらこちらに同じ様な感じのお店が増えてくるわけです。

浅く広くと言っても良いかもしれません。イオンモールに店舗を出したいという方がどれぐらいいるかは知りませんが、私の想像ではある程度これまでで出揃っている感はあります。イオンモール広島府中などはよいバランスだと思っていました。
そこに新たに同じ様なランクのお店をこれまでと同じ分だけ集めようとしても、そうそう全体の質を上げることは出来ないのでないか。
なんとなく似たり寄ったりのお店がモール内に軒を連ねるのです。

どういうお店が入っているかを細かくは覚えていませんので、思いつくものを上げるならば、

まずヴィレッジヴァンガードが2つあります。

これは相当異常な事態です。一応片方は「ヴィレッジヴァンガードプラス」という名前でしたが、表から見る限り同じ様な感じです。

あと、スーパーが2つあります。
ジャスコとマルエツですね。モールの端と端にかなりの面積をとっています。どちらも23時まで営業しています。

簡単に言ってしまえば、イオンモールが2つあるんです。

本当に単純に、質ではなく量が増えた、のです。


ところが、イオンレイクタウンは部分的にマーケティングの幅を広げようとしていました。
私が注目したのは化粧品です。

モールの一角に百貨店の一階のような化粧品売り場が陣取っていました。各ブランドごとのブースに分かれ、白を基調としたインテリアに担当のお姉さま方。
女性に聞いた訳ではないので真偽の程は不明ですが、ここで化粧品を買いたくなるか?と思ったのです。
化粧品売り場はモールの中央通りに面していますし横を家族連れとかぞろぞろ通るわけです。
化粧品をある種の嗜好品とするならば、ここで買うことに高揚感は見出しにくいのではないでしょうか。同じ物を同じ値段で買うなら百貨店などのちゃんとした所で買いたいと思うのが普通なのではないかと思いました。

地元の人にとってはもちろん便利なのですが、基本的に私は「利便性」と「高揚感」は結びつかないと思っています。
「利便性」と結びつくのは「少しの高揚感」が限界です。

本当に欲しい物や吟味したいもの、買うこと自体に喜びを見出だせるものは、買う環境にまでこだわるのが普通の感覚です。

イオンレイクタウンのここでの失敗はマーケティングの幅を部分的にしか広げなかったことです。
主たるターゲットはまったく変わっていないのにそこに違うターゲット層(同じターゲットの中の別の購買意欲を含む)を狙った店舗を挿入してしまったのです。


あと最後の問題として、規模の問題が挙げられます。

一言で言うと、大きすぎる。

もう歩くだけで疲れる訳です。
私は電車で行きましたので駅から一番遠いところに行く頃にはもうクタクタです。それも先ほど書いたような同じ様なお店が並んでいるのですから、徐々に興味が失せてきます。スタバが5店舗もあることにも頷けます。

広くしたならそれだけに飽きさせない工夫が必要だと思います。

浦沢直樹の漫画のように、盛り上がりのないダラダラしたモールの道が延々伸びているのを見ると、帰りたくなります。


そろそろまとめに入ります。

大は小を兼ねるという言葉があります。
スケールメリットという言葉があります。

日本一の規模を誇るイオンレイクタウンはそれだけで十分魅力的な存在です。店舗の数は700を上回り、イベントも多彩、アウトレット棟も揃え、交通の便も良い。

しかし、実際にそこに行くと、言葉上での魅力が思ったほど感じられないのです。

それはあまりに大きな面積に体力的な限界があること、同じ様なお店が多くあるためにそれぞれに個性を見いだせないことで私が考えるイオンモールの重要な魅力「少しの高揚感」が徐々に削られていったしまうからです。

また、イオンレイクタウンは「少しの高揚感」を逸脱し百貨店のようなことも始めることで、部分的にマーケティングの幅を広げようとしました。

ところがそれは我々が求めるものとは一線を画したもので、ますます気持ちを冷めさせました。

本来ならばショッピングモールというものの可能性をいろんな方向に伸ばすことができたはずです。

サッカーで足の速い選手、バスケで背の高い選手。
それ自体は大きな武器です。それを持っているだけでその選手の価値は大きく上がるでしょう。

しかし、それに胡座をかいたり、間違った方向に努力をすると、本来の魅力ごと失ってしまう可能性があるのです。

私はしばらくはイオンレイクタウンに行くことはないでしょう。
ですが、イオンモールの可能性は信じています。

魅力のバランスを意識して、または全く違う価値観を目指して、これからも鋭意努力をして頂くことを心から願って結びの言葉とさせて頂きます。


p.s
スタバは駅に一番近い店舗が一番空いています。
理由は言わずもがなですね。