とある公共の入札案件というなのボールが社内から回ってきたわけです。

キャッチしろよと、入札いって取ってこいよと。

こっちとしては全然気付いてなくて、自覚もなくて

っていうかキャッチボールしてたっけ?

お前、朝から一緒だけどボール持ってたっけ?どこ?あ、胃袋・・・

ぐらいの勢いで、「レフト行ったぞー!」って声掛けられたんですけど、

もうね、振り返ったらボール目の前。すんごい近くにあって大きく見えるわけ。

こちとら河川敷の原っぱで四つ葉のクローバーを探してたっちゅうのに

振り返ったらボールが視野の80%を占めてるわけ。

走馬灯も急に回りだして、エンスト起こすよね。
いやむしろ、走馬灯は見えるけど、微動だにしないみたいな。
バッテリー上がった?

ボール投げた本人はというと視野の隅っこのほうで(がんばれゴエモンに出てきたボスのおたふくの攻略イメージ)、なんかやりきったみたいな顔で、

こっちがキャッチするのを今か今かと待ってるのね。

なんならもう帰ろうかなってな哀愁漂わせてるの。

いや、キャッチボールは相手がキャッチすんの見届けてから終わるのがルールですから!

って公認野球規則を参照しながら突きつけたい。


そりゃあね、こちとら東京の荒波に揉まれてもうすぐ3年ですよ。

銀座も行ったし、新橋も行った。渋谷だって練り歩くし、スクランブル交差点で立ち止まるとかも出来る。
ことあるごとに神楽坂に行こうとするし、皇居周辺だって逆走する。
ゴールデン街も行ったし、なんなら高尾山だって踏破してる。
西武線以外の私鉄は乗った。中央線と総武線の違いも熟知してる。

地方からどんな球が来ようと余裕のキャッチング見せるぐらいのスキルは持ってる。

東京がオレを鍛えた。オレも東京を鍛えた。同行二人。

シーズンオフ(決算期)の珍プレー好プレー集はオレの好プレー集のみで構成されるぐらいの喝采と称賛。

ごめん、今年珍プレーなしで、って堪忍ポーズのプロデューサー。


もっと言えば、この世に生まれ落ちて30年弱、色んな修羅場もくぐってきた。

教育の王道(義務教育)も受けたし、男子校も6年通った。

大学生活なんか楽しすぎてもう12年目。

引っ越しもいろいろした。

結果、太平洋ベルト地帯はだいたい埋めてきた。あとは愛知辺りに住めば、太平洋ベルト地帯は名称変更を迫られる。受験生もオレの次なる挙動に注目してる。

フットワークの軽さと臨機応変な対応力で、心技体揃った横綱級ビジネスマンとして名を轟かせてる。


そんなオレからすれば、そりゃキャッチは容易いよ?

こっちはキャッチボールするなんて聞いてないから当然素手だけど、相手は単なる白球。

相手がダルビッシュのストレートだろうと、
山本昌のシンカーだろうと、
井川のチェンジアップだろうと、

左手にシロツメクサのリースを持った状態でもがっちりがの字でキャッチング。
ボールの持つ運動エネルギーは手首の関節で全部受け止めきれる。
肘とか肩とか微動だにしない。


自信があった。


でも、よーく目を凝らして見てみたら、ボールじゃなくて鉄球だった。
砲丸投げとかで使う級を超えてるの。っていうか鉄球って他に用途あんのかって思った。

それで近いっていうより単純に大きかった。日常においてスケール感と距離感が狂うほどのマッス。
まさに未知との遭遇(至近距離)。

喩えるならナメック星のドラゴンボールね。クリリンの頭ぐらいあるやつ。
7つも運べるかってな具合のアレ。台車じゃ無理、リアカーが要る。


そのうえ、真っ赤っ赤。
結構な熱々状態らしく、こいつの描いてきた放物線に白い湯気みたいなん残ってる。

鍋に焼石いれるやつあるじゃない。焼いた石を入れてグツグツさせるやつ。

出来るよ炊き出し。この鉄球なら焼石in鍋の豪快な炊き出しが十分できる。有り余る熱エネルギー。

それ何ジュール?って言いたい。久々にジュールを使いたい。

運動エネルギーの増加も想定外な上に、熱エネルギーまで来ちゃった。

エネルギー保存則も一時的になしってことにして欲しい。


で、キャッt、、、、、からの、否っっ!

出しかけた腕を脱兎のごとく引っ込めたね。

feat.亀でもいい。うさぎとかめの見事なコラボレーションによる腕の引っ込め。

その引っ込め具合は速度も方向も抜群だった。完璧なベクトルを意識できた。


なんてったって、殺意を感じたもんね。
本能というか、脊髄反射というか、オレの中の心技体評議会が「判定:否(いな)」って誰よりも早く回答した。
国会とか政府もうちの評議会を是非見習って欲しい。

んでもって、とりあえずテクニカルタイムアウト取ったね。
こうやって両手でT字作って。

で、聞いた。
帰り支度をしてるボールを投げた張本人に

「どういうつもり?」って。

曰く、もうそれはドラゴンボール級に価値あるボール(案件)だと。
曰く、ワシはあのボール投げるためにみっちり訓練(根回し)までしたんだと。
曰く、あのボール(案件)をキャッチ(落札)した暁には、もっと色んなボールが手に入るんだと。

だから逆に言われた。

「どういうつもり?」って。

リアルクロスカウンター。それも殺傷能力が若干高まって。
ロトの紋章でポロンがやってたよね。
「右手からフバーハ、左手からフバーハ。合体魔法、バイバーハ!」で敵の炎を倍返し!

マジ賢者いたーって思った。部長と思ってたけど、賢者だったのね。

分かる、賢者様の言いたいことはよく分かる。

でもこちとら身一つでルンルン気分でクローバー探しにやってきた身ですよ。

そりゃ武術の達人は常に臨戦態勢で、ウォームアップなんてのはスポーツマンのやることだっていう渋沢剛気(刃牙)の理論も分かる。

軍手とかグローブとか甲冑とか虫取り網とか常備してないのはこちらの落ち度かもしれない。

だからこそ、今日出掛ける前に言って欲しかった。
「今日、キャッチボールしよう」って。
それだけで多少の準備はしたよ。まさか熱々の鉄球とは思わなくても知恵と工夫をこらしてなんとか受け止めるくらいのことは出来たかもしれない。

更に言えば、投げる直前でもいい。

これからボールを投げますよって。

然るべき伝達手段でもってオレに伝えて欲しかった。

それがキャッチボールのルールよね。公認野球規則を参照するまでもなく人として、当然押さえておきたいステップ。

投げた後だもんね。
ほんと、鉄球が音速を超えてなくてよかった。
最悪の場合、鉄球が先に来ちゃってたら、薄れ行く意識の中で「レフト逝ったぞー」って聞くとこだった。


っていうかそもそもねその訓練 at 精神と時の部屋?

オレも参加したかったなー。

誘ってくれれば余裕で付いてったのに。

一人だけスキルアップしてやんの。

小学校の時とかに一緒にやり始めたRPGを仲良く進めてたのに、勝手にレベル上げだけしてる奴を思い出したよ。
物語は進めてないのにレベル上げだけしてやたらとその知力と腕力を財力を財産を自慢してくるわけ。

なんか世間の冷たさと格差を感じたね。これが格差社会化って。
ゲームの中に生活保護とかないのかって思った。
生活保護受けながら世界の平和を守りたい。
治療薬を買う時に健康保険を使いたいってね。


だいたいね、そんな重いだけのものならともかくね、
側にいるだけで心がドキドキっていうか脇がジメジメしてくるような熱量をもった危険極まりないものをね、いきなり投げられても困るんですよ。

困る。とっても対応に困る。

そっちはそっちでなんかもう、やりきった顔をしてるわけじゃないですか

こっちがキャッチできるかどうか!ってのがスペクタクルな瞬間なのに、

もう脇汗とか拭いちゃって、
そのあと8x4とか振りまいて、
人混みの中を両手上げながら通り過ぎたりしちゃって、
「もっと近付ける・・・」とか
脇に対して自信付けてるじゃないですか。

さては図ったなとこちらが勘ぐるのもどうかご理解いただきたい。

キャッチしに行ってもいいよ?
でも、左大腿骨頚部骨折とかなったらちゃんとお見舞い来てくれる?
慰謝料も払ってくれる?

投げっぱなしはやーよ。
投げっぱなしジャーマンスープレックスはやーよ。

せめてきちんとジャーマンスープレックスでフォール決めて欲しい。

責任を持って、オレをマットに沈めて欲しい。死に水も取って欲しい。



まあ、テクニカルタイムアウト a.k.a DIO様のザ・ワールド状態で、ただ今絶賛時間の流れは停止中なのよね。

確かそろそろ10秒で「そして時は動き出す」の。

困ったなー。

華麗なるスルーか、玉砕覚悟のキャッチングっていうかセービングか、忍法身代わりの術よね。

今のところ、
「なんか軽ーく(高め)にキャッチ(入札)しようとして思ったより重かった(安かった)です。ごめん。テヘ。」作戦が有効かなー。